【Vol.118】COVID-19(新型コロナ)時代のサプリメント成分:前編

「手洗い」や「3密を避ける」などの対策に加えて、サプリメントによる栄養補給もプラスしたいところですね。
さて、今回から3回に分けて、NIH(アメリカ国立衛生研究所)が医療従事者向けに発表した記事(2021年8月17日付)をご紹介します。
この記事では「COVID-19(新型コロナ)の予防・治療に栄養補助食品の使用を推奨するには、まだデータが不十分」としながらも、「免疫力を高めたり炎症を抑える働きが期待できる栄養補助食品への関心は高い」と認め、代表的なサプリメント成分11種類の安全性や有効性に関する科学的現状をまとめています。
ぜひ、今後のサプリメント選びの参考にしてください。
この記事の目次 |
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※本ページで紹介しているサプリメント(栄養補助食品)は健康な人が不足しがちな栄養を補うために開発されたものであり、疾病の治療や予防を目的としたものではありません。
@ アンドログラフィス

●有効性:
新型コロナ以前に行われた研究では、アンドログラフィスの摂取により気道感染症の重症度が減少する可能性を示唆しています。
また軽度から中等度の新型コロナ症状を有する12人に1日3回、アンドログラフィス抽出物を与えたタイの臨床試験では、60mgのアンドログラフィスを摂取し始めてから数日以内に咳の改善が見られ、3週間後にはすべての患者が回復しました。
ジョージアのトビリシでは現在約1,400人の新型コロナ患者に対し、アンドログラフィス(1日の総投与数90〜120mg)とエレウテロコッカス・センチサス(エゾウコギ)を含む製品を投与し、発熱や頭痛、鼻づまり、咳、筋肉痛などの炎症性症状が軽減するかどうかを調査中です。
●安全性:
短期間における1日340〜1,200mgの使用においては、懸念は報告されていません。ただし臨床試験では吐き気や嘔吐、めまい、皮膚発疹、下痢、疲労などの軽い副作用が報告されています。
またいくつかの動物実験では、生殖能力に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
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A エキナセア

エキナセアは抗酸化作用や抗菌作用を有しており、単球やナチュラルキラー細胞(免疫細胞)を刺激することでウイルスが体内細胞に侵入するのを阻害します。また炎症性サイトカインを阻害し、炎症を軽減する可能性もあります。
この成分の研究はそのほとんどが「風邪などの上気道疾患を予防し治療するのに役立つか」どうかを評価したものです。
●有効性:
いくつかの研究では、エキナセアが一般的な風邪予防における限られたメリットを提供することを示唆しています。さらに一部研究者は、新型コロナにも類似の効果が期待できる可能性を示唆しています。
ただし現在までに、ヒトにおける新型コロナ予防にエキナセアの使用を評価した研究は確認されていません。
エキナセアは免疫賦活作用を持つ可能性があり、新型コロナ感染時に発生するサイトカインストームを悪化させる可能性も指摘されています。しかし、臨床試験から得られたエビデンスによると、エキナセアの使用は炎症性サイトカインレベルを増加させるのではなく、むしろ減少させることが示唆されました。
●安全性:
副作用はほとんどなく、あっても胃腸の不調や皮膚発疹の報告が一般的です。単独で肝臓障害の報告例がありますが、これらは汚染物質や処方に起因すると考えられています。また、まれにアレルギー反応を引き起こす可能性があります。
妊娠中のエキナセアの安全性は不明なため、専門家は妊婦の使用を控えるよう勧告しています。
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B エルダーベリー

エルダーベリーにおける効果の研究は、主に果実そのものではなく果実エキスを使用しています。
●有効性:
アメリカ国内で新型コロナが流行した直後、エルダーベリーサプリメントの販売価格は2倍になりました。一部の研究者は、新型コロナ治療の研究にエルダーベリーを使うことを推奨しています。
この関心の高さは、エルダーベリーを使った実験や動物実験の予備知識に基づくものです。細胞にウイルスが侵入するのをエルダーベリーが阻害したり、免疫系を刺激することで、上気道感染症の予防に役立つのではと示唆されたためです。
風邪やインフルエンザに対するエルダーベリーの効果はいくつかの小規模臨床試験で検討され、有望な結果も得られています。ただし、新型コロナの予防・治療にエルダーベリーが使用され、評価された臨床試験の報告はありません。
NIHの臨床試験データベースには、約5,000人の小児および成人に対する新型コロナ予防や治療を目的に、600mgのエルダーベリーエキスとヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、亜鉛、ビタミンC、ビタミンD、N-アセチルシステインおよびケルセチンの併用能力を調べる試験が1件掲載されています。しかし、この試験はまだ参加者の募集を始めていません。その他、新型コロナにおけるエルダーベリー使用試験はまだ計画されていないか、進行中です。
●安全性:
セイヨウニワトコの樹皮や葉、種子、未熟な果実に含まれるシアノゲン配糖体には潜在的な毒性があり、吐き気や嘔吐、下痢による脱水症状や中毒を引き起こすおそれがあります。ただし毒素は調理時の加熱で破壊されるため、適切に加工された市販品ではこの懸念を引き起こすことはありません。
エルダーベリーはインスリンやグルコースの代謝に影響を与える可能性があるため、糖尿病の人は注意して使う必要があります。
また妊婦への使用における安全性は確認されておらず、専門家は妊娠中の使用を控えるよう勧告しています。
最近の分析では、希釈されたり、黒米エキスなどの安価な成分を混入させたエルダーベリーサプリメントが報告されています。これは人気の急上昇に伴い、供給不足が生じたためと考えられます。
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C 高麗人参(朝鮮人参)

高麗人参には、ジンセノサイドと言われるトリテルペン配糖体が豊富に含まれています。研究では主にRb1ジンセノサイドや、腸内細菌がジンセノサイドを代謝して作られる生理活性物質・コンパウンドKが注目されています。
これら体内で作られる高麗人参由来の生理活性物質の種類や量は、高麗人参製品の製造方法や個人の腸内フローラに影響されることがあります。
動物実験や実験室研究では、高麗人参がBリンパ球の増殖を促し、免疫の活性化や調節に影響を及ぼすサイトカイン(インターロイキンやインターフェロン-ガンマ)の産生を増加させることが示唆されています。さらに高麗人参はウイルスの複製を阻害し、抗炎症作用を持つ可能性があります。しかし高麗人参がヒトの免疫機能に対して意味のある効果を持つかどうかは、明らかではありません。
本来の高麗人参と間違われる植物に、エゾウコギがあります。エゾウコギはかつてシベリア人参と言われましたがトチバニンジン属ではなく、ジンセノサイドは含まれていません。
●有効性:
高麗人参が風邪やインフルエンザの上気道感染症の予防に役立つか、いくつかの臨床試験で検討されましたが、結果はまちまちであり、新型コロナを扱った試験はありませんでした。
高麗人参の免疫への働きや、上気道感染症の治療に用いられたという限られたエビデンスから、新型コロナの予防や治療に高麗人参を用いる研究を推奨する研究者もいます。
香港では伝統的な漢方薬としての高麗人参やその他の成分が、新型コロナを発症した約150人の子供や大人のすばやい回復に役立つかどうかの臨床試験を行なっています。
NIHの臨床試験データベースによると、新型コロナの予防や治療に、高麗人参を単独もしくは他の成分と組み合わせて臨床試験に使用する計画は進行中ではありません。
●安全性:
高麗人参は安全であり、副作用のほとんどは軽微な頭痛や睡眠障害、胃腸症状などです。しかし1日あたり2.5g以上の摂取は不眠症や頻脈性不整脈、高血圧、神経過敏をもたらす可能性があります。
1970〜80年代、膣からの出血や乳房痛の症例報告が相次ぎ、高麗人参の安全性が疑問視されました。一部の科学者は、高麗人参にはエストロゲン作用があると結論づけました。
しかしこれらの症例報告のうち1つはルーマニア人参によるものであり、高麗人参によるものかどうかは明らかになっていません。また当時は、エゾウコギと高麗人参も混同されていました。
それでも一部の専門家は、妊娠中の高麗人参の使用は安全ではないかもしれないと警告しています。
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